高齢者の自己放任がゴミ屋敷を招く? 独居老人の増加とともに広がる闇
高齢者とゴミ屋敷
高齢になればなるほど気力や体力がおとろえてくるのは、ある程度、仕方のないこと。そして何かしなければならないことがあっても、なかなか行動に移せないということは誰にでもあります。しかし、それも度が過ぎるとセルフネグレクト(自己放任)と呼ばれる状態になります。もともとネグレクトという言葉は育児や介護の放棄を意味しましたが、今はセルフネグレクトとして「自分で自分のことを管理できない状態」を指すようになりました。高齢者のセルフネグレクトは部屋が散らかったままにしたり、ゴミ出しをしなかったりするため、ゴミ屋敷の要因になります。家族が同居していれば面倒を見てもらえますが、一人暮らしの高齢者は注意が必要です。増え続ける独居老人
日本は少子高齢社会となり、高齢者(65歳以上)の一人暮らしが増加しています。政府の調査によると、独居老人は1980年には男性約19万人・女性約69万人で高齢者人口に占める割合は男性4.3%・女性11.2%でしたが、2010年には男性約139万人・女性約341万人で高齢者人口に占める割合は男性11.1%・女性20.3%となっています。また試算によれば将来的にも増加の一途をたどることが予想されています。(グラフ参照)独居老人の増加で深刻化する問題
こうした高齢者の一人暮らし、いわゆる独居老人が増えることで、どのような問題が起きるのでしょうか。考えられるものを挙げてみましょう。- 安否の確認がしにくい
- 振り込め詐欺などの犯罪被害に遭いやすい
- 生きがいを失いがちになる
- 重いものが持てず片付けなくなる
- 生活意欲を失い掃除や洗濯をしなくなる
- 重い、痛いなどを理由にゴミ出しをしなくなる
- 衛生面に無関心で洗面や入浴をしなくなる
- 刺激がないため老化や認知症などが進みやすい
- 孤独死になりがち
独居老人の自己放任
人は誰かの役に立つことで、生きる意味や自らの存在意義を感じています。しかし、一人暮らしをしている独居老人の場合、地域社会で孤立しがちになり、だんだん生活意欲を失っていきます。独居老人でも、たまに家族や友人の訪問があれば、家を片付けたり、掃除したり、あるいは料理でもてなしたりするかもしれません。ところが完全に一人暮らしが身についてしまうと、そのような生活に必要な行為をしなくなってくる傾向があります。特に体調がすぐれない人は、思ってもすぐ行動に移せず、気がついたときはセルフネグレクトになっていることもあります。セルフネグレクトはゴミ屋敷の原因に
行政によるゴミ収集は、多くの場合、朝早くから指定の場所にゴミを出さなければなりません。セルフネグレクトの人は早起きができず、自宅にゴミが溜まりがちになります。あらゆる意味で人生に対して投げやりですから、食事もろくにとらず、歯磨きや顔を洗うのも面倒で、入浴もせず、部屋の整理や掃除もしなくなります。病気になっても医師にはかかりません。そのような生活の先にあるのは、ゴミ屋敷であり、孤独死あるいは自殺です。セルフネグレクトがゴミ屋敷の原因になるのは、一人暮らし、社会との隔絶、支援の拒否などがエスカレートし、日常生活が破たんしてしまうからに他なりません。独居老人のゴミ屋敷への対処法と家族などの支援
では、独居老人のセルフネグレクトによるゴミ屋敷の発生に、周囲はどう対処すればよいのでしょうか。まず高齢者の孤立状態を解消させる、ということが最優先です。日常的に孤独な状態に置かれている老人は、多かれ少なかれ自己放任の傾向が出てきます。難しいかもしれませんが、家族や地域社会と密接な関わりが保てるような状況をつくること、これが一番です。 精神的な疾患や、身体的な病気、体調不良などがある場合は、とにかく病院で診察を受けさせるようにしましょう。セルフネグレクトは単なる放棄ではなく、その背景に何らかの病気が隠れている場合もあります。 行政の支援としては、以下のようなものを利用するとよいでしょう。これらは自治体(市区町村)の窓口で気軽に相談できます。- 介護保険の在宅福祉サービスを利用する
- 介護保険以外の在宅福祉サービスを利用する
- 生活指導を継続的に実施する
- 日常生活自立支援事業を利用する
- 介護施設や福祉施設に入所する
- 成年後見制度を利用する